「孫子」の兵法と経営戦略の本質
少し時間が空いてしまいましたが、おススメの本の紹介です。
今回取り上げるのは中国の古典中の古典「孫子」です。
「孫子」とは
皆さん「孫子」はご存知ですか?中国の歴史や古典に興味がある人、好きな人であれば、良く知っているという人も多いでしょう。
「孫子」とは、紀元前500年頃、中国の春秋時代の孫武という兵法家が書いたとされる兵法書です。また、この場合の「子」は「先生」の意味があるので、孫武のことを指す場合もあります。
ところで「兵法」って何でしょう?中国の歴史に詳しい人以外はあまり聞きなれない言葉なのではないかと思います。
「兵法」は簡単に言うと「軍隊の動かし方・戦争の戦い方」になります。つまり、「兵法家」とは「軍事・戦争の専門家」であり、「兵法書」は「軍事・戦争の解説書」であると言えます。
実際に孫武は、春秋時代の呉という国の王・闔閭に軍師として仕え、呉を強国に育て上げたという実績があります。
その孫武が書きあらわしたとされる「孫子」ですが、現代まで長く読み継がれてきた名著であり、現代のビジネスでも通用する多くの教えが書かれています。
今回は、「孫子」の教えを現代の経営戦略に活用するため3つのポイントについて説明していきます。
「孫子」を現代の経営戦略に活用する3つのポイント
孫子の教えは、現代の企業経営にも通ずるものがあります。そのポイントとして次の3点について説明していきます。
- 状況分析から始める
- 主導権は渡すな!
- 最善は戦わずして「勝つ」
状況分析から始める
これは、「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」という有名な一節からです。ここでいう「彼」は戦う相手のこと。
つまり、敵国のことも自国のこともよくわかっているならば、何回戦っても負けることはないということです。
ビジネスの世界に置き換えて考えるならば、自社や競合企業の強みや弱み、ターゲット顧客の特徴の調査や分析を入念に行い、その分析に基づいて事業を進めれば、成功につながる可能性が高まるというものです。
これらの分析のための手法としては、SWOT分析やPEST分析があります。
SWOT分析は自社のもつ「強み」「弱み」と、自社を取り巻く環境の「機会」「脅威」を洗い出して、戦略を検討するものです。
PEST分析とは自社を取り巻く環境について、「政治」「経済」「社会」「技術」の各分野ごとに情報を洗い出し、「機会」や「脅威」となりうるものを分析していくものです。
このような分析手法を活用して、相手のこと・自分のことをよく理解してビジネスを進められるようにしていきましょう。
主導権は渡すな!
これは、「善く戦うものは人を致して人に致されず」という一節に由来します。
上手に戦うものは相手の動きに翻弄されるのではなく、相手の軍を自分の思うままに動かすということです。ここで出てくる「致す」は「コントロールする」という風に解釈すればよいでしょう。
ビジネスの世界でも、「交渉相手に合わせてうまくやろう」としても、望むような結果を手に入れることはできません。自分たちの望む結果を得るためには、自分たちが主導権を取り、相手を動かしていくようにしていかなければなりません。
そのためには、交渉相手や市場の状況に関する分析を行い、複数のシナリオを用意しておくなどの事前準備が重要な意味を持ってきます。
入念な事前準備に基づいて主導権を握る。これが成功につながる重要なポイントなのです。
最善は戦わずして「勝つ」
これは「百戦百勝は善の善なる者には非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」という一節からです。
「百回戦って全勝するのが最善ではない。戦わずに敵を屈服させるのが最善である」と孫子は説いています。
「孫子」は兵法書なので「勝つ」ための方策を説いているのですが、「戦って勝つ」ことが最善とは考えていないのです。
戦闘になってしまえば民衆が巻き込まれてしまうことになり、自国も敵国も国力が疲弊してしまいます。
ビジネスの世界でも同様です。競合先の企業と血を血で洗うような激しい競争になってしまうとお互いに疲弊してしまいます。
数年前の「吉野家」や「すき家」を中心とした牛丼業界の価格競争を思い出していただけるとよいでしょう。低価格を実現するために人件費を削れるだけ削り、現場ではスタッフの負担が大きくなってしまいました。
このような事態を避けるためには、他社との「差別化」を模索していくことになります。独自のサービスを開発したり、特定のニーズに応える商品に特化したりして、他社と競争しない状態を自ら作っていくのです。
おわりに
今回は、現代のビジネスに通じる孫子の教えを3つ取り上げました。この他にも「孫子」は現代にも通用する教えがたくさん記されています。
ビジネスマンの教養の一つとして、「兵法書」を読んでみてはいかがでしょうか?